2004年08月26日

地形散歩


ワタリウム美術館の展覧会関連企画、エンプティ都市散歩学で東京の地形を散歩するガイドをした。現実に足元にあるのにあまり気にしていない地形、地形に残された歴史の痕跡、有り得た未来の風景、などを想像しながら歩く。1. 永田町 - 谷町、2. 白金台、3. 広尾 - 麻布、の三つをまわるコース。参加者には、地形をメインに作成したいくつかの地図を配った。

地図中の赤い線が散歩コース。

2004年8月22日 13:00〜
ワタリウム美術館集合

1.永田町 - 谷町
地下鉄銀座線外苑前駅 → 青山一丁目駅(乗換)半蔵門線 → 永田町駅下車(出口6) → 散歩

東京の典型的な地形の一つ、武蔵野台地の端と侵食谷、谷底の低地をたどるコース。出発前に左の地図、現地(首相官邸下の溜池跡地)で右側の地図を配った。
右側は明治期に測量された五千分一東京図測量原図を貼り合せたものにコースを乗せたもの。三角測量をもとにしているため、スケールの調節のみでかなり正確に現在の地図に重ねることができる。ついこの間まで江戸時代だった頃の正確な測量図というのは、非常に興味深い。大名の屋敷をそのまま転用したと思われる施設などもたくさんある。

2. 白金台
地下鉄南北線六本木一丁目駅 → 白金台駅下車(出口1) → 散歩

まだ武蔵野の森が拡がるばかりだった時代の名残をとどめる貴重な場所、白金の自然教育園を歩く。台地に侵食谷がどうやって作られ、それがどういう風景を形成するかを実地体験。

3. 広尾 - 麻布
山手線目黒駅 → 恵比寿駅(乗換)地下鉄日比谷線 → 広尾駅下車(出口1) → 散歩

今日のおさらい散歩。山の手と下町が入り組む地域を歩く。最後は、そんな地形の上に数十万の人が渦巻く、麻布十番納涼祭りで解散。

30人もの参加者数のため、散歩っぽく雑談しながら歩くと聞こえない人が多く出てしまう。そこで要所要所で立ち止まってヘッドセットと拡声器を使って話す。かなり恥ずかしいが、仕方ない。歩きながら雑談をリアルタイムに多人数で共有する方法はないものか。

電車の移動を除いた総歩行距離は約7.5km。坂道もあるし、そこそこハードな行程だったが、さほど暑くない日だったのが幸いだった。


最後におみやげ代わりに配った地図(部分)。地形の上に現実の街の地図(数値地図25000(地図画像))を重ねたもの。


これは配らなかったが、地名などの文字だけ重ねるのも面白い。数値地図25000のTIFFデータは、カラーパレットをいじることでこのようにレイヤー状に情報を抜き出すことができる。

等高線の間隔は白金のみ1mで、あとは全て2m間隔。地形図は数値地図5mメッシュ(標高)のデータを整形後、GMTで描画した。カシミール3Dでもある程度同じようなことが、しかもはるかに簡単に可能だが、等高線がガタガタになってしまったり、段彩色を細かくコントロールしにくかったりと、やや不満があったためGMTを使用した。

Posted by jiro at 2004年08月26日 18:10 | トラックバック (3)
コメント

おもしろそうだねえ。

綺麗な地図ですね。渋谷が谷で青山が山だってことがよくわかります。

ところで,双方向の雑談を30人でやるのは,歩きながらだろうがなんだろうがそもそも無理じゃないか。デバイスの問題ではなく。説明を聞く,というモードになりますよ,どうしても。

いっそトランスミッターを使って局地的ラジオ放送をやるのはどうでしょう。参加者はイヤホンを付けて聞きながら歩く。質問やリクエストは電話でうける。一人でしゃべり続けるのは辛いから,ディレクターとかけあいで。「どうでしょう」方式。

Posted by: もとえ at 2004年08月26日 23:26

おもしろかったですよ。
一番上の地図を生成した後、一週間くらいモニタ上で拡大したり縮小したりして眺めて過ごしてましたね。GMTはPostScriptなんで、拡大しても崩れない。そのあとA3いっぱいに印刷して眺め回してまた一週間(笑)。苦労して生成した甲斐があった感じ。地図は美しくないとね。
段彩色をベージュにしたりすると、文明が滅びた後の東京、みたいな絵になってそれはそれで凄みがあります。

でも、準備の過程もおもしろかったけど、実地を歩くのがやっぱり一番面白いです。地形は現場にある。当たり前だけど。他にもいい場所がたくさんあるんですが、今回は泣く泣くボツに。

いや、聖徳太子じゃないし、30人と同時に雑談しようってんじゃないんです。その時々でいろんな人と雑談。その様子を共有できればオッケー。周囲2mくらいの音を拾うマイク+超ミニFMならいけそうですね。

Posted by: もとなが at 2004年08月27日 00:19

いろんな妄想や想像が浮かんできそうな良い地図ですね。
地図を一週間眺めながらにやにやしているであろう姿を想像してしまいました(笑)。

先日新宿のハンズで高さ方向深さ方向が凸凹している日本地図を見つけたんですが、しげしげと触っていました。地形ってリアルに把握しにくいもんだよなぁ、と思っていたところでした。

Posted by: naka at 2004年09月02日 02:46

都市に限らず、自然の中でも結構地形は読みにくいんですよね。地形に対して人間は小さすぎるので、仕方ないのかも。
地図(上空からの視点=垂直方向の大きさ)は手に入れられたので、あとは移動速度(=水平方向の大きさ)が手に入ると世界が変わるのではと予感します。つまり、地形カーナビが欲しいです。

という拡張方向と、小さい生き物として地べたに存在しながら生身だけで世界を把握するという方向も捨てがたく、悩ましいところです。

Posted by: もとなが at 2004年09月02日 13:55

はじめまして。地形図、美しいですね。地形散策に参加してみたかったです。
僕は、渋谷に着いた銀座線から「橋を渡って」井の頭線へ移動するときとか、四谷のあたりで丸ノ内線が地上に出るときとか、五反田の「空中」から出発した池上線が大崎広小路へ「めり込んでいく」とき、のような、鉄道が土地の起伏と拮抗してる瞬間にすごく「地形」を感じます。

Posted by: 石川初 at 2004年09月08日 21:12

はじめまして。コメントありがとうございます。石川さんのウェブサイトを以前から興味深く、そしてもったいないので少しずつ拝見していました。

私自身、なんでそんなに自分が地形に惹かれるのか実はよくわかっておらず、いろんな人と散歩することでその理由が少し見えたりしないかなと期待していました。でもやっぱりよくわかりませんでした。

たしかに鉄道には、地形と拮抗する場面がたくさんありますよね。自動車より傾斜に弱いからでしょうか。速度もあるし、ダイナミックですよね。池上線は乗ったことがないのですが、乗りたくなりました。

Posted by: もとなが at 2004年09月09日 15:58

60近いおばさんなんですが 地図を見ていると飽きないのです 歴史に興味があり 江戸古地図を探して 都内散歩のおりに 昔は00家のお屋敷跡だったとか見て回っていました そのうち 本来の地形図を見たくなり
探し回って もとながさんを発見 おお喜びいたしました 私は 東大先端技術研究所の隣に住んでいますが
あちらのほうもみせていただけませんか

Posted by: 吉田 at 2008年05月25日 11:38
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